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いのちの食べかた
ニコラウス・ゲイハルター
食にまつわるドキュメンタリーは数多くありますが、中でも私のイチオしはこれです。
映像は、鶏や牛、豚が生まれるところから始まる。何も知らない彼らは、餌を与えられ、農場で成長し、何の感情のやりとりもないまま屠殺され、食べられる。家畜が生まれてから食卓にのぼるまでのプロセスが、生々しく見せつけられるのだ。
牛を射殺する場面や、解体シーンの衝撃もさることながら、生まれたばかりのひよこがピヨピヨ言いながらベルトコンベアの上を流れていく光景も、ぞっとする。ナレーションはない。映像は、グロテスクでありながら圧倒的な映像美を追求したカットが、ただただ続いていく。
食べるとは何か?命とは何か?生まれるとは?
いっさい言葉を発しないにも関わらず、痛烈にメッセージを発信する、これぞ究極のドキュメンタリーだと思う。